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市販のアレルギー薬や睡眠改善薬に広く使われている抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンは、長期にわたって日常的に服用すると認知症のリスクを高める可能性がある。推奨用量を超えて大量に服用した場合も有害な影響がありうると専門家は警告する。(PHOTOGRAPH BY EHSTOCK, GETTY IMAGES) 季節性アレルギーや不眠、かぜの症状への備えとして、「ジフェンヒドラミン」という成分の入った市販薬を家に常備している人は少なくないだろう。しかし、この薬を使い過ぎないよう、医師たちが以前から警告していることは、あまり知られていないかもしれない。 ジフェンヒドラミンは、数多くの市販薬に有効成分として含まれている。もとはアレルギー症状の予防と治療のために承認された薬だが、現在では、乗り物酔い、不安、かぜの諸症状、吐き気、不眠、さらにはパーキンソン病など、幅広い目的に使われるようになっている。 ジ
オオメジロザメは攻撃的で沿岸部に暮らす傾向があるため、人々に恐れられている。今回、体長約2.5メートルのメスが7200キロ超という記録的な長距離を移動していたことが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY RYAN DALY) 2024年夏、ガーナの漁師トゥラワ・ハキームさんが、同じ西アフリカ沿岸部に位置するナイジェリアの都市ラゴスの沖合で漁をしていたとき、乗組員がオオメジロザメを釣り上げた。ハキームさんはこのとき、木製の漁船に引き上げられたこのサメが、ある記録を塗り替えようとしていることを知らなかった。 体長約2.5メートルのこのメスは、少なくとも7200キロを超える壮大な旅を成し遂げていたのだ。知られている限り、この種では最長の移動距離で、オオメジロザメが2つの海を泳いだことが記録された初めての事例だった。5月8日付けで学術誌「Ecology」に発表された研究論文によれば、このサメ
中国、北京から南へ約200キロメートルの満城区にそびえる陵山(りょうざん)。2000年以上前、その東側の斜面から数千トンもの岩が削られ、中山王の劉勝(りゅうしょう)と妻の竇綰(とうわん)の遺体を納める複雑な陵墓が築かれた。 その後2000年間、奇跡的に盗掘を免れたこの「満城漢墓(まんじょうかんぼ)」は1960年代に発見され、その技術だけでなく、目も眩むばかりの副葬品が考古学者たちを驚かせた。夫婦の遺体は高貴な玉を金の糸でつづった「金縷玉衣(きんるぎょくい)」に包まれていた。この葬服は現在では中国最高の国宝の1つとされている。 北方の領主 劉勝の父の景帝(けいてい)は、秦に続く中国史上2番目の王朝である漢王朝(紀元前202年~後220年)の第6代皇帝だった。紀元前154年、反乱に悩まされた景帝は、劉勝を帝国北東部の辺境地域、中山(ちゅうざん)に派遣して統治させた。(参考記事:「楚の考烈王の墓
底引き網漁が海底に与えた影響を空から撮影した。(SILVERBACK FILMS AND OPEN PLANET STUDIOS) 破滅の雲が迫るなか、その道筋にいる生きものたちは必至に逃げる。 しかし、雲の動きは速く、どんどんと近づいてくる雲にやがて全ての生きものが飲み込まれていく。 パニック映画のように聞こえるかもしれない。しかし、これは底引き網漁を映した希少な映像の一場面だ。底引き網漁とは、重い鉄製の網を海底に落とし、それを船で引いて魚を獲る漁法。米国では主にマダラ、モンツキダラ、オヒョウなどの一魚種を狙うにもかかわらず、海底付近にいる生きもの全てを区別なく捕え、不要なものはあとで海に投げ捨てるという極めて破壊的な漁法だ。 「魚を獲るのに、これ以上にムダな方法は考えられません。捕えた獲物の4分の3以上は捨ててしまうのですからね」と、著名な自然史ドキュメンタリーの制作者であるデビッド・
NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)のデータに基づいて描いた太陽系外惑星K2-18b。K2-18bは地球の約8.6倍の質量を持ち、K2-18という比較的冷たい矮星のハビタブルゾーン(生命が存在しうるエリア)を公転しており、地球から約120光年離れた場所に存在する。新たな研究によると、この惑星の大気中にはジメチルスルフィド(DMS)という分子が存在する可能性があると示唆されている。(Illustration by NASA/ESA/CSA/Joseph Olmsted, STScI) 2020年、科学者たちは金星に生命の兆候を発見したと主張した。地球の微生物が作り出すホスフィン(リン化水素)と呼ばれる悪臭ガスの痕跡だ。しかし、この主張にはすぐに異議が唱えられ、数年経った今でも論争が続いている。そして今、また別の悪臭ガスが地球外生命体に関する新たな議論を巻き起こしている。今回の
イソギンチャクの触手には毒針が備わっているのにもかかわらず、共生するクマノミ類が刺されないのは、クマノミの体表にあるシアル酸という糖分子が成長に伴い減少するためだということを、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループが発見した。シアル酸は毒針の発射のトリガーで、イソギンチャクもシアル酸を持たず、自らを刺さないようにしていることも分かった。「共生の仕組みを理解する手がかりになる」としている。 イソギンチャクの触手には刺胞(しほう)と呼ばれるカプセルがあり、刺激を受けると毒針を発射する。ヒトのみならず、多くの魚も刺される。イソギンチャクの種類によっては、重症になることもあるため、扱いに注意が必要だ。しかし、アニメーション映画などでもおなじみのクマノミはなぜ刺されずに、イソギンチャクをゆりかごのようにして共生できているのか分かっていなかった。 OIST海洋生態進化発生生物学ユニットのヴィ
研究者らは長い間、天の川銀河は40〜50億年後にアンドロメダ銀河と衝突すると考えてきた。このイラストは、40億年後の夜空を描いたもの。最初の接近の後、アンドロメダ銀河が潮汐力によって引き伸ばされ、天の川銀河もまた歪んでいる様子が示されている。(Illustration by NASA, ESA, Z. Levay and R. van der Marel (STScI), and A. Mellinger) 1世紀以上にわたり、天文学者たちは、われわれがいる天の川銀河の隣にある巨大なアンドロメダ銀河が、こちらに向かって猛スピードで接近してくる様子を観測してきた。ハッブル宇宙望遠鏡を使った近年の観測結果も、長く語られてきた予言を裏付けているかのように思われた。つまり、今から40〜50億年後、ふたつの銀河は衝突し、融合してとてつもなく大きな新しい銀河ができるというものだ。 しかし、このふたつの
生態学者のバーバラ・クランプ氏は、別の研究プロジェクトの最中、シドニーのチャーリー・バリ保護公園で、オウムたちが水飲み場で水を飲むために列をつくっているのを発見した。(VIDEO BY B. KLUMP ET AL/BIOLOGY LETTERS 2025) オーストラリアに暮らすオウムの仲間のキバタン(Cacatua galerita)が「鳥頭」という言葉に新たな意味をもたらしている。数年前、キバタンはごみ箱を開けて餌を探すようになり、最終的に、この行動は何十もの地域に広まった。そして今、シドニーのある公園で列をつくって順番を待ち、水飲み場の水道から直接水を飲むようになったと、2025年6月4日付けで学術誌「Biology Letters」で報告された。 「この鳥はいつも私を驚かせてくれます」と、論文の筆頭著者でドイツ、マックス・プランク動物行動研究所の行動生態学者バーバラ・クランプ氏は
2022年、イラク南部のバスラ近郊で、古代シュメールの都市エリドゥの遺跡を発掘する考古学者たち。(Alla Al-Marjani/Reuters/GTRES) エリドゥは、知られている限り世界最古の文明で、紀元前4000~1000年頃に現在のイラクで栄えたシュメール文化の基礎となった都市だ。 エリドゥの重要性は、歴代のシュメール王の名が並ぶシュメール王名表に記されている。紀元前2000年頃まで、さまざまな版の王名表がくさび形文字で作成されていた。表の後半部分に記録されている都市名と王朝名は、歴史資料でも確認できる。 表の前半部分には、神話上の人物名も含まれ、「大洪水(地域的な災害の可能性も、旧約聖書の創世記に書かれている大洪水に関連している可能性もある)」の前に存在していた初期の王国の都市名が刻まれていた。 その最初に書かれている都市がエリドゥだ。「王権が天から下った後、王権はエリドゥにあ
英ノーフォークでさえずるヨーロッパコマドリ(Erithacus rubecula)。鳥のさえずりは、うつや不安を軽減することを示した研究がある。(PHOTOGRAPH BY DAVID TIPLING, NATURE PICTURE LIBRARY) 科学者たちは、自然に触れると心が癒やされることを知っている。屋外に出れば体が活発になり、森に入ればストレスや心拍数、血圧が下がる。鮮やかに咲きほこる野の花々を見れば、畏敬の念が湧いてきて、自分という存在や頭の中で渦巻く問題などは途方もなく大きなものの一部にすぎないと思わされる。そして、鳥の歌声にも、私たちの脳を落ち着かせる効果があることが科学的に示されている。 しかし、鳥のさえずりが特別に感じられるのはなぜだろう? 「社会的な動物である私たちは、生きものとつながり合いたいと思うようにできているのです」。そう話すのは、米オーバリン大学の社会・環
インド、カルナータカ州マイソールの市場では、さまざまな種類のレンズ豆が売られている。インド料理ではレンズ豆は定番の食材だ。(PHOTOGRAPH BY MATTHIEU PALEY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 近年、豆類は栄養豊富な食材として注目を集めている。しかし、実際に食べられている豆の種類には偏りがある。インドや中東などでは、さまざまな豆類が主要な食ベ物となっているが、米国はそうではなく、料理にする場合でもビーン類(インゲン豆など)ばかりが使われる傾向にある。日本でも豆類の摂取量は大豆とその加工品が大半を占めている。 一部の専門家は、エンドウ豆やレンズ豆にもスポットライトが当てられるべきだと主張する。それらもタンパク質、食物繊維、抗酸化物質を豊富に含み、高い栄養価を誇っている。 2022年にイタリア、カメリーノ大学の研究者らが学術誌「Pharmaceutic
クマノミの一種であるクラウンアネモネフィッシュ(Amphiprion percula)は特定の状況下で成長をコントロールできる。最新の研究は海洋熱波を乗り切るため、体を小さくしている可能性を示唆している。2023年の海洋熱波中にキンベ湾で撮影。(PHOTOGRAPH BY MORGAN BENNETT-SMITH) 博士課程の学生であるメリッサ・フェルステーフ氏は、計測した値を見て、何か問題があるのではないかと心配になった。その魚が縮んだようだったのだ。「彼女は3回計測していました」と、共同研究者で英ニューカッスル大学の海洋生物学者テレサ・ルーガー氏は振り返る。「彼女は数値に確信を持てるよう、複数の人に同じ計測を依頼していました」 しかし、値は正確だった。フェルステーフ氏らは、海洋熱波中にクマノミの一種であるクラウンアネモネフィッシュ(Amphiprion percula)の体長が短くなっ
シャーレで培養される幹細胞。幹細胞は、病気で損傷した組織を発生・修復させる細胞を含め、体内のあらゆる種類の細胞に分化できる。(PHOTOGRAPH BY MASSIMO BREGA, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 1986年の映画『スター・トレックIV 故郷への長い道』には、船医のドクター・マッコイが透析を受けている患者に1錠の薬を飲ませると、たちまち新しい腎臓ができてくるという場面があった。これは再生医療の見果てぬ夢だが、実現するのはなかなか難しい。 病気によって心臓や肺などの重要な臓器が傷ついた場合、医師はせいぜい損傷の悪化を食い止めることしかできない。けれども今、30年におよぶ試行錯誤の末に、患者の体内の幹細胞を活性化させて臓器を修復させる治療法が実現する可能性が高まってきた。 幹細胞は、機能を持つ細胞のもとになり、組織の成長や修復を担う細胞を生み出す。米国の非営利研
かつて、地中海は塩と石膏が広がる乾いた大地だった。そこに、洪水が押し寄せた。(PHOTOGRAPH BY NASA/HERITAGE IMAGES/GETTY IMAGES) 600万年前の地中海は、現在の美しい景観とはほど遠い姿だった。「海」と呼べるものですらなく、地殻変動によってジブラルタル海峡には山脈が隆起し、地中海は大西洋から切り離されていた。水が絶えず流入しなければ、灼熱の太陽によって海水は蒸発する。その結果、塩分濃度の高い湖がいくつか点在するだけとなり、それらの周辺には塩や石膏に覆われた地が延々と広がった。 地中海が干上がったとされるこの現象は、現在、科学者の間で「メッシニアン塩分危機」と呼ばれている。中新世の末期、地中海はほぼ死滅した状態だった。 さて、530万年前のある日、この山脈を歩いていたとしたら、ちょろちょろとした水が流れている、という異変に気づいたかもしれない。山の
臓器移植のドナー不足を解消するために、ブタの臓器を役立てることはできるか? 研究の最前線を追い、実際に移植を受けた患者たちの声を聞く。 そこに立ち入るには入念な準備が必要だった。事前に説明書を渡してほしいと思ったほどだ。まず警備員の詰め所で署名をする。入り口で靴を脱ぎ、ロッカールームに入ってシャワーを浴びる。丈の長い手術用ガウンを着て、膝まであるゴム長靴を履き、最後に安全ゴーグルを装着する。 「いろいろと面倒をかけて、すみません」。案内役のビョルン・ピーターセンが前に進むよう手招きした。「病原体が入らないよう、とても気をつけているので。大丈夫、すぐに慣れますよ」 私はその2時間ほど前に米国中西部の某都市(都市名は伏せるよう求められた)のホテルで目を覚ましたのだった。そして今、ドイツ生まれの科学者であるピーターセンの後に付いて、この極秘の研究施設の廊下を進んでいった。 飼育施設に入ると、何か
日本に広く分布する小さな生き物が、人と自然の共生に貢献していることがわかった。 ネズミと聞くと厄介者と考える人は少なくない。だが、福山大学生物科学科教授の佐藤淳さんが率いるチームが手がけたアカネズミの研究からは、そんなイメージを覆す姿が見えてきた。 里山生態系におけるアカネズミの影響を調べようと考えた佐藤さんは、人間が活動するハッサク畑とアカネズミがすむ森が隣接する瀬戸内海の因島に着目。胃の内容物ではなく、糞に含まれる食べ物のDNAを解析するというこれまでにない手法で、このネズミの食性を季節による摂取生物の違いに至るまで調査することに成功した。 アカネズミは、冬に備えてブナ科の木の実を森の中に分散させてため込む習性があり、それが種子の拡散につながることは生態学的に知られている。DNAの解析はこの知見と見事に一致したが、さらに、アカネズミはブナ科に被害を与えるマイマイガを多く食べることもわか
のみのような歯を使い、ものの数時間で1本の木をかじり倒すビーバー。樹皮を食べ、残りは巣やダムの材料として使う。(PHOTOGRAPH BY RONAN DONOVAN) 初めは毛皮を珍重され、その後、厄介者として扱われてきたビーバー。だが今、気候問題を解決するヒントを与えてくれると注目されている。 火は強風にあおられ、干ばつで乾ききった森に勢いよく燃え広がった。炎は轟音(ごうおん)を立てて森を走り、道路や川を越えてロッキー山脈国立公園の歴史的建造物や民家を焼き、2人の命を奪った。焼損面積は約8万ヘクタール。2020年10月21日に米国コロラド州北部で発生したこの「イースト・トラブルサム」火災は、同州史上で2番目に大きな火災だった。 この火災で焼け残った唯一と言えるものが、ビーバーの池だった。驚くには当たらない。ビーバーといえばダムを造って水をためる、げっ歯動物だ。だがビーバーがもたらす恩恵
モロッコ南部の町アサから8キロの地点にあるヤシの木々は、かつて緑にあふれていたオアシスの唯一の名残だ。(PHOTOGRAPH BY M'HAMMED KILITO) 何世紀にもわたり、世界中で数億人がよりどころにしてきた砂漠のオアシスが、今、失われつつある。モロッコ南部のコミュニティーでは、古くからの知恵と現代の技術を融合させてオアシスを守ろうという取り組みが進行中だ。 アフリカ北西部のアトラス山脈から南へ車を走らせる。モロッコのドラア渓谷に入ると、辺りはみるみる荒涼とした景色に変わった。やがて砂漠の中のオアシスの町ムハンミド・エル・ギズリンにたどり着いたところで、舗装された国道が終わる。 「サハラ砂漠の玄関口」とも呼ばれるムハンミドと周辺の村には、約6100人が暮らしている。何世代にもわたって、ムハンミドの町はドラア川をまたいで発展してきた。水をたたえたドラア川の北岸沿いの道にはかつて、
米国オレゴン州のトンプソンクリークで産卵床を守るギンザケのメス。ギンザケは太平洋に生息する7種のサケのうちの1種だ。(Photograph by Photographer Michael Durham, Minden Pictures) 米国ワシントン州シアトルには、毎年秋にギンザケ(Oncorhynchus kisutch)が産卵のために遡上する河川がいくつかある。長年、遡上するサケを観察してきたシアトルの市民科学グループは、1990年代以降、大雨が降った後、腹に卵を抱えたギンザケの死骸が不自然なほど多く見つかることに気づいた。 シアトルの川には、多くの雨水が排水路から流れ込んでいる。研究者たちは、路面から川に合流した雨水に含まれる化学物質が、大雨後のギンザケ大量死の原因ではないかと疑っていた。 路面を流れる排水に含まれる数千種類の化学物質の中から犯人を絞り込んでいった科学者チームは、2
日光を浴びれば体はビタミンDを作ることができる。しかし、日光浴による皮膚がんのリスクを避けつつ、十分な量のビタミンDを得るには工夫が必要になる。(PHOTOGRAPH BY MATTHIEU PALEY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) ビタミンDは健康に欠かせない栄養素だ。骨を強く保つだけでなく、筋肉や免疫機能の働きを助ける働きもある。にもかかわらず、ビタミンDの適切な摂取の量や方法に関しては、激しい議論が続いている。 多くの人がビタミンDを十分に取っていないという点で研究者の意見は一致している。しかし、実際のところ「十分な」量とはどの程度か、どこからがビタミンD欠乏症とみなされるのか、(特に若くて健康な人にとって)サプリメントにどれほどの効果があるのかについては、さまざまな見解がある。 ビタミンDの取り方についての助言もまた、矛盾に満ちている。ビタミンDの供給源とし
山口県のさびれた地域に走る、静かな線路。(PHOTOGRAPH BY SOICHIRO KORIYAMA) ピュリツァー賞作家でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)であるポール・サロペック氏は、地球の物語をつむぐ3万4000kmの徒歩の旅「Out of Eden Walk(人類の旅路を歩く)」に挑んでいる。人類の拡散ルートをたどりつつ、日本に到達した。第2回は山口県の油谷新別名周辺から。 「ソーイチは何を撮ってるんだい?」 「人だよ」 「通りすがりの?」 「そう、誰でも。人を見かけたら、撮らずにいられないんだ」 郡山総一郎(ソーイチ)氏は、日本を一緒に歩くことになった仲間だ。手慣れた熟練のドキュメンタリー写真家で、精力的な中年男性で、しゃがれ声で笑う、歩くのが速い語り手だ。総一郎は、うまくいくのか疑わしいミッションをこなそうとしていた。私たちが日本の地方を歩く1400キ
アロマザーは「乳母」のようなもので、母親の代わりに、赤ん坊をあやしたり、教育したりすることによって、ゾウの社会で重要な役割を果たしている。(PHOTOGRAPH BY DAVID CHANCELLOR, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 2023年12月、ケニアのサンブル国立保護区で、10歳のアフリカゾウのメスが群れから姿を消した。1カ月後、このメスは血縁関係のない2頭とともに戻ってきた。この2頭は10歳と15歳くらいのメスと推定され、若い方は生まれたばかりの子どもを連れていた。ケニアの保護団体「セーブ・ジ・エレファンツ」の研究マネージャーを務めるジャコモ・ダマンド氏によれば、この後、驚くべきことが起きた。 「(群れに戻ってきたメスが)不慣れな若い母親ゾウの子育てを手伝っていました。まるで乳母のように」とダマンド氏は振り返る。
白血球の一種であるマクロファージ(中央)が、大腸菌(赤)から放出された毒素によって破壊される様子を走査型電子顕微鏡で撮影した着色画像。一部の大腸菌は、細胞のDNAを傷つける毒素コリバクチンを放出し、大腸がんの発症を促す可能性がある。(MICROGRAPH BY STEVE GSCHMEISSNER, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 若い世代の大腸がんの発生率が世界的に増えている。最近の研究によると、日本は、大腸がん患者の増えるペースが、年長の世代より50歳未満の若い人のほうが速い国の一つだ。具体的に何が若い患者の急増を引き起こしているのかについては、これまで多くの科学者や医療従事者が頭を悩ませてきた。(参考記事:「若い世代で大腸がんが増加、見逃してはいけない兆候とは、研究」) しかし、専門家は以前より、大腸菌などの細菌が作る毒素であり、DNAを損傷する「コリバクチン」が関わっ
九龍城砦の建物と建物をつなげる屋上は、子どもたちの遊び場、洗濯場、ゴミ捨て場、休憩場になっていた。また、近くの啓徳空港を離発着する航空機を眺めることもできた。(Photograph by Greg Girard) 私たちはこの夏もホタルを見られるのか、謎多きホタルを守るには 1994年まで、香港には「九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)」「九龍城(くーろんじょう)」などと呼ばれる小さな街があった。狭い区画に高い建物が密集し、3万人以上がひしめき合って暮らしていた。人々がどのように暮らしていたのか、想像もつかないほどの人口密度だった。 街にはゴミが散乱し、犯罪が横行する無法地帯として知られ、中国政府からも香港政府からも忘れられていた。「常に好奇心や恐怖心をかきたて、自ら進んで足を踏み入れようとする者はほとんどいなかった」と、歴史家のエリザベス・シン氏は、1987年に学術誌「Journal of
(Video by Brendan Barrett / Max Planck Institute of Animal Behavior) 中米パナマの沖にあるヒカロンという小さな島で、ノドジロオマキザル(Cebus capucinus imitator)のあるオスが、穏やかならぬ行動を流行らせているようだ。顔の傷から「ジョーカー」と名付けられたこのサルと仲間のオスザルが、マントホエザル(Alouatta palliata coibensis)の赤ちゃんをさらって背中にのせているところを、自動撮影カメラがとらえていた。それまで見られたことのない奇怪な行動が、2025年5月19日付けの学術誌「Current Biology」で報告された。 「あまりに奇妙だったので、すぐにアドバイザーのオフィスに行ってこれが何なのか尋ねました」と、ドイツ、マックス・プランク動物行動学研究所とパナマにあるスミソニ
ミャンマーの琥珀に閉じ込められていた9900万年前の新種の寄生バチSirenobethylus charybdis。(PHOTOGRAPH BY QIONG WU, COLLEGE OF LIFE SCIENCES AT CAPITAL NORMAL UNIVERSITY) 驚くべきことに、食虫植物のハエトリグサのような装置を腹部に持つ寄生バチの化石が見つかった。研究チームが9900万年前の琥珀(こはく)に閉じ込められていた十数匹のハチを調べたところ、おそらくこの装置で捕らえた獲物に卵を産み付け、卵を育てさせていたという。 新種のこのハチは、大量の海水を吸い込んで吐き出し、船を引きずり込むほどの渦を巻き起こしたギリシャ神話の怪物カリブディスにちなみ、シレノベチルス・カリブディス(Sirenobethylus charybdis)と名付けられた。論文は3月27日付けで学術誌「BMC Biol
ゼリー状の球体の中で、ふ化のときを待つイカの赤ちゃんたち。Capitella ovincolaという蠕虫(ぜんちゅう)はカリフォルニアヤリイカの卵の中に入り込む。(PHOTOGRAPH BY JULES JACOBS) カリフォルニアヤリイカ(Doryteuthis opalescens)が母親でいられる時間は残酷なほど短い。カリフォルニアヤリイカのメスは一生に一度、ドラマチックな繁殖の騒ぎに加わる。月明かりの下、たくさんのイカたちが交尾(交接)のため、浅瀬に集まる。そこでは腕を赤くした繁殖期のイカたちが、もやのように溶け合う。 「通常、海底谷は安定した基準点ですが、イカたちが生きた流れのように溶け合い、まるで斜面が動いているような錯覚を覚えました」とフォトジャーナリストのジュールズ・ジェイコブズ氏は話す。 通常は見られたとしても年に1度だというカリフォルニアヤリイカの交尾を記録するため、
下関の周辺であぶるような太陽の下で根菜を掘る農家。気候変動による、主要産物であるコメの収穫量や品質の低下を受けて、別の作物を試す農家も出てきている。(PHOTOGRAPH BY PAUL SALOPEK) ピュリツァー賞作家でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)であるポール・サロペック氏は、地球の物語をつむぐ3万4000kmの徒歩の旅「Out of Eden Walk(人類の旅路を歩く)」に挑んでいる。人類の拡散ルートをたどりつつ、2024年9月、日本に到達した。日本編の第1回は下関から。 船で福岡に上陸した私は、北に向かって歩きはじめた。太陽のまぶしい、湿度の高い日だった。徒歩で、自分の2本の足を使って、この国を縦断する予定だ。写真家の郡山総一郎氏と合流した。 都市部のはずれには、巨大な鉄の卵のような、液化天然ガスのタンクが並んでいた。周囲には誰もいないが、驚きはない
ストレスの軽減から睡眠の改善まで、呼吸法は日々の生活に対する体と脳の反応を変化させることができる。(PHOTOGRAPH BY MINISERIES, GETTY IMAGES) 気持ちが張り詰めているときに「深呼吸して」と言われたことがある人は、このありふれた助言に科学的な裏付けがあることを知ってほしい。研究によれば、意識的な呼吸には、心臓の健康状態の改善、不安の軽減、気分の高揚、認知機能の向上、睡眠の質の改善など、すぐに表れる効果から長期的な効果まであるという。 「呼吸法は、神経系を落ち着かせ、心身の回復力を高める、最も単純で効果的なツールの1つです」と、英ブライトン&サセックス医科大学の呼吸法研究室のガイ・フィンチャム氏は言う。「けれどもごく身近なものであるがゆえに、その威力は過小評価されがちです」。氏は2023年に学術誌「Scientific Reports」に呼吸法とメンタルヘル
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